天声人語より・・・   

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 近くの公園を歩くと、南に向いた斜面に一群の水仙が咲いていた。一重(ひとえ)のニホンスイセンに華々しさはないが、新春らしい清らかさを匂(にお)わせている。〈水仙は八重より一重孤に徹す〉西嶋あさ子。きりりとした姿の一重びいきに、わが意を得たりの方もおられるだろう

▼この花は、日本家屋の暗がりにも似合う。水仙で名高い福井の越前海岸を訪ねた開高健は、「正月花としてあちらこちらの家の闇に鮮やかな閃(ひらめ)きをあたえ……」と書いた。たしかに、ほの暗い玄関などに生けられた水仙を見ると、ぽっと明かりがともった心地にさせられる

▼またの名を「雪中花」と呼ぶのは、寒さに負けずに花を開き、雪の中でも芳香を放つからだろう。越前岬水仙ランドに聞くと1500万株は今が見ごろという。きのうは雪が舞い、海には灰色の波が寄せていたそうだ

▼その北陸をはじめ日本海側は、雪の三が日になったところが多かった。年初に降る雪や雨を「御降」と書いて「おさがり」と呼ぶ。豊作の兆しとはいえ、故郷からのUターンに難渋された方もおられたことだろう

▼今年の暦は余情を欠き、きょう4日の月曜から、きっぱりと日常が立ち戻る。年の瀬のざわめきも、初春の華やぎも一族再会も、たちまち思い出となって流れ去る。去年と今年の入れ替わりは、実に素早い

▼水仙に話を戻せば、植物の組み合わせで「双清(そうせい)」といえば梅と水仙をさすそうだ。寒さに向かって清々(すがすが)しく花開く姿は、ともにどこか人を励ますところがある。あやかりつつ、この1年に向き合うとする。
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by msroku | 2010-01-05 15:57 | 雑感

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